解説:国家賠償と刑事補償
解説:国家賠償と刑事補償
刑事補償
刑事補償とは無罪が確定した人に対して、逮捕・勾留・服役などで身柄が拘束されていた期間に応じて国が保証金を支払う制度。一言でいうと、国が一定の補償金を支払うことで謝罪する(詫びる)ことと言えます。
対して国家賠償とは、公務員の過失や意図的な不法行為によって損害を被ったことに対して、責任を問う賠償制度。被害者が国や自治体を相手取って民事裁判を起こすのです。不法行為、またその不法行為と損害との関連性を訴える側が証明しなければなりません。
それぞれ、日本国憲法に根拠があります。
<憲法40条> 刑事補償制度
抑留又は拘禁された者が無罪となったときは、法律の定めるところにより、国にその補償を求めることができる
<憲法17条> 国家賠償制度
何人も、公務員の不法行為により、損害を受けたときは、法律の定めるところにより、国又は公共団体に、その賠償を求めることができる。
| 刑事補償 | 国家賠償訴訟 | |
|---|---|---|
| 目的 | 国(県)によって与えられた損害を金銭で補ない償なう制度 (金銭の支払い) | 国(県)の違法な手続きによる被害を賠償する制度 (金銭の支払い) |
| 根拠法 | 日本国憲法第40条、刑事補償法 | 日本国憲法第17条、国家賠償法 |
| 原告 (訴える人) | 無罪になった人 | 公務員の職務上の過失や違法行為で被害を受けた人 |
| 被告 | 国 (日本国政府) | 警察官は地方公務員なので都道府県(地方自治体)と検察官、裁判官は国家公務員なので国 |
| 国などの過失や違法行為の証明 | 無罪判決が出ているので、ここではは不要 | 必要 (原告側に立証責任) |
| 手続き | 無罪判決を出した裁判所へ請求 (決定手続き) 刑事手続の延長上の「特別救済制度」 | 地方裁判所に訴訟を新たに提起 (民事裁判の判決手続き) |
| 金額 | 勾留1日あたり、1,000円〜12,500円(上限)で、裁判所が決定 | 被害(損害)額に応じて裁判所がその都度決定 |
| 裁判 | 法律では公開とされているが、実際には殆ど非公開で書面審理。短期で終わることが多い | 公開の民事裁判。傍聴可能。証人尋問などできるが、実際には殆ど書面審理。長期化することあり |
| 異議申し立て(抗告) | 原告、被告ともに可能だが、実例はあまりない | 原告、被告ともに可能 |