実例:刑事補償と国家賠償
実例:刑事補償と国家賠償
刑事補償
刑事補償とは無罪が確定した人に対して、逮捕・勾留・服役などで身柄が拘束されていた期間に応じて国が保証金を支払う制度。一言でいうと、国が一定の補償金を支払うことで謝罪する(詫びる)ことと言えます。
1.免田事件の刑事補償
免田事件とは1948年12月に熊本県で祈祷師夫婦が殺害された強盗殺人事件です。免田栄さんが容疑者として逮捕され死刑判決を受けました。が、以下の経過で冤罪であることが明らかににされました。
- 1949年1月 逮捕
- 1952年1月 死刑が確定
- 1983年7月 再審で無罪となる→即日釈放
免田さんは、34年以上にもわたって身柄拘束され、約9000万円の刑事補償金が支払われました。
(1日あたり1万2500円×365日×34年)
2.布川事件の刑事補償
布川事件(ふかわじけん)とは1967年8月に茨城県で発生した強盗殺人事件です。男性2名(桜井昌司さんと杉山卓男さん)が容疑者とされ無期懲役の判決が確定し下獄しました。が、次の経過で冤罪であることが明らかになりました。
- 1967年10月 逮捕
- 1978年7月 無期懲役が確定
- 1996年11月 仮釈放
- 2011年6月 再審無罪が確定
桜井さんと杉山さんは29年にもわたって身柄を拘束され、一人あたり約1億3000万円の刑事補償金が支払われました。
(1日あたり1万2500円×365日×29年)。
3.足利事件の刑事補償
足利事件は1990年5月に栃木県足利市で女児が殺害された事件です。菅谷利和さんが容疑者とされ無期懲役の判決を受けました。が、次の経過で冤罪であることが明らかになりました。
- 1991年12月 逮捕
- 2000年7月 無期懲役が確定
- 2008年12月 東京高裁がDNAの再鑑定を決定
- 2009年4月 菅谷さんと犯人が別人であることが判明
- 2009年6月 刑の執行停止→釈放
- 2010年3月 再審無罪が確定
菅谷さんは17年にわたって身柄を拘束され、約8000万円の刑事補償金が支払われました。
(1日あたり1万2500円×365日×17年)。
4.大河原化工機事件
大川原化工機事件は、生物兵器の製造に転用可能な噴霧乾燥機を経済産業省の許可を得ずに輸出したとして、外為法違反などの疑いで大川原化工機株式会社の社長大河原正明さんと元取締役島田順司さん、顧問のだった相嶋静夫さんを逮捕し起訴。が、公判開始直前に検察が起訴を取り消した。
- 2020年3月 逮捕、起訴
- 2020年7月 検察が公訴を取り消し裁判所は公訴棄却
決定では「仮に起訴内容について審理が続けられていれば、無罪を受けるべき十分な理由がある」とし、不当な身柄拘束への刑事補償として計1130万円を国が支払えと決定した。
(3人に対して1日あたり1万2500円で計算。OさんとSさんには各415万円、病気を理由に勾留停止になるまで約8カ月間身柄拘束され、その後亡くなった元顧問の男性の遺族には300万円)
国家賠償
国家賠償請求は、公務員の過失や意図的な不法行為によって損害を被ったことを原告(えん罪被害者)が立証しなければなりません。民事事件なので、そういうルールになっています。これが問題、国賠訴訟での勝利を阻む高い壁になっているのです。